春、恋。夢桜。
「は……?」
いきなり聞こえた声に、俺は思わず後ろを振り返った。
「間抜けな声じゃのう……。何じゃかぼけぇっとしておるし。
お主、気が抜けすぎじゃぞ?」
見慣れた桜模様のピンク色の着物。
ぱっちりとした大きな瞳。
暗闇に映える白い肌。
長い髪は、両耳の辺りで結ばれてる。
「……今時、着物とか流行んねぇんじゃの?」
「はぁ?お主、しばらく会わん間に頭でも狂ったのか?
わしはいつもこの格好じゃったじゃろうが!今更そんなことを言うでない!」
いきなり俺の前から消えたくせに……――――
「しゃべり方も変だしよ……」
「黙れっ!」
いきなり現れるなんて……
「……反則だろうが」
「ん?今度は何じゃ?まだ何かくだらん文句でもあるのか?」
少しふくれっ面になりながらそう言う目の前の彼女の存在を嬉しく思いつつも
俺は何もできずなくて立ち尽くした。
「麗華……。どうしてここにいるんだ?」