春、恋。夢桜。
「そうか。なら良いんじゃ!もしかして、スケッチブックを見たせいで間抜け面になっておったら困ると思っただけでの……。
ほら!で?続きは何じゃ?」


麗華の行動は相変わらず自由で、気まぐれで、わけがわからない。

でも、そんなところが麗華らしくて、俺は思わず笑った。


こんな風に笑ったのは、久しぶりな気もする。

少なくとも、麗華がいなくなってからは笑ってない。


「笑っとらんで、さっさと話せ!気になるじゃろうが……」


声を張り上げた麗華は、俺の腕をばしっ、と叩いた。


「わかったから!正直に言うから」


この和やかな雰囲気が壊れるんじゃないか、って不安はあったけど

俺は、ここ数日間の自分の状況をそのまま話した。


桜がなくなって驚いたこと。

悲しかったこと。


すぐに月美丘へ走って、事実を全て聞いたこと。


麗華のトートバッグを貰ったこと。

ノートに文字の練習がたくさんしてあって感動したこと。


それからは何もやる気が起きなかったこと。

そのせいで梨恋に心配をかけさせて、泣かせたこと。

潤にまでいろいろと言わせてしまったこと。


話してるとだんだん自分がみじめな気分になってきて、どうしようもなかった。

でも、ここでごまかしたって意味がない。


「……響は、本当に馬鹿じゃのう」
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