春、恋。夢桜。
全てを聞き終えた麗華は、ぼそっとそう言った。


「馬鹿ってなんだよ……馬鹿って」


こんな話を聞かされたって、麗華は俺のことを軽蔑するだけだと思う。


弱くはなりたくない。

自分にできることをしっかりとやりたい。


そう語ってくれた麗華にとって、今の俺の姿は最悪のものだと思う。


何を言われても文句は言えないな……――――


少し諦めてそんなことを考えてると、麗華が口を開いた。


「響が、わしがいなくなったくらいでへなへなしとるなんて思ってもおらんかった!
全く、お主がそこまで阿呆じゃったとは、がっかりじゃ!

じゃが、どうしてじゃろうな……。そう思う反面、少し嬉しくもあるのじゃ」


「え?」


予想通りの言葉の先に続くのは、予想外の言葉だった。

それは、完全に予想を超えてて、麗華の真意なんて少しも見えない。


「じゃって、響をそこまで間抜けにする程、響の中でわしの存在は大きいものじゃった……ということじゃろう?
嬉しいではないか!」


にやり、としながら俺を覗き込んできた麗華から、俺は思わず顔を逸らした。


「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ。いきなり消えやがって、びっくりして当然だろうが……。

それに、そうだな。認めるよ……。俺にとって麗華は、本当に大切な存在だったんだよ。
……いなくなると間抜けな生活しかできなくなるくらいにな!」
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