春、恋。夢桜。
やけになりながら叫んだ俺を、麗華は思いっきり笑い飛ばした。


そんな姿を見ると、また自分が情けなく思えてきて、泣きそうな感覚を覚える。


「そうか、そうか。響はそんなにもわしのことを好いておったのか」


麗華は、明らかにからかうような口調で言ってきた。


『好いておった』


何だかその言葉が、直接的で……。

だが、麗華の口調のせいかどこか現実離れしてるような、妙な気分だった。


「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ」

「馬鹿ではないぞ!結構重要なことではないか!
他人が自分を好いておるか否かで、自分の生活を狂わせる人間だって、世の中にはたくさんおるじゃろうが」

「何か、いきなり話が変な方へ飛んでないか……?」

「ん?そうか?」


自分の思ったままを話す麗華を、俺は少し羨ましく思った。


俺ももう少し、素直になれたら良いんだろうか。


素直に麗華がいなくなったことを認めて、素直にそれを悲しんで……


素直にその悲しさを喚いたら、素直に正しい道へ進めるんだろうか。

「まぁ。この話は置いておくとして……。響、お主にはもう少し、気合いを入れてもらわ
ねば困る!」
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