春、恋。夢桜。
麗華は、何かを注意する時に使うような

人差し指を突き立てたポーズで言った。


「そうやってぐだぐだしておっても、何も良い方向へ向かわぬことくらい、響が1番よくわかっておるのじゃろう?
じゃったら、いい加減しゃきっとせい!」


一気に大声でここまで言うと、麗華は手を下ろして静かに口を開いた。


「わしだっての、大切なものをなくしたことくらいはある。現に今、そんな状態じゃろう?じゃから、響の気持ちだってよくわかる。

そうは言っても、1度起こってしまったものは変わらぬ。どうしようもないんじゃよ。
じゃから、さっきも言ったじゃろう?」


「あぁ……」

「わしは、辛くても、今わしにできることをやる。お主も、まだ歎くには早いんじゃよ?」


静かだけど力強いその言葉が、しっかりと俺の中に響いた。


今までにも潤からいろいろと言われてきたけど

麗華に言われると、どこか気分が違う。


潤に言われるよりも、すっと受け入れられるような気がした。


って、こんなこと言ってると、あいつに怒られそうだけどな……――――


「わしの尊敬する大好きな方がのう、こんなことを言っておったのじゃ。

『幸せのための努力は、例え困難であっても最優先すべきことであり、楽しみでもある』

とな。


じゃから、響には頑張ってもらわねば困る!

今努力せんかったら、響は幸せを掴めぬのじゃぞ?」


幸せ、か。


でも、俺の幸せは……――――
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