春、恋。夢桜。
「俺、麗華がいないと幸せになれない気がするんだけど……」

「はぁ?」


俺は、麗華の怪訝そうな顔を見てから

自分が何を口走ったのかをはっきり認識した。


いや、これは恥ずかしすぎるだろ……!


「あ、いや。これは……だな。そのー……何でもない!忘れてくれ」

「忘れられるわけなかろう!こうやってあたふたしておる響を見るのも楽しいしのう」


明らかに笑いながらそう言う麗華を見たら、もうどうでもよくなってきた。


俺が口走った一言は、きっと本音だ。


麗華の喜ぶ顔を見るのが嬉しくて、麗華と少しでも長く話してたいと思ってた自分。


カズハという名前に、『麗華』という文字を与えた自分。

麗華がいなくなっただけで、やる気もなにもかもを失った自分。

例え夢でも、麗華にもう一度会えたことを喜ぶ自分。


全てを受け入れて、素直になったら

自分の言動の一部始終が、たった1つの想いに左右されてたような気がしてきた。


「どうしたんじゃ?いきなり静かになりおって……」


心配そうな顔をする麗華を、俺はゆっくりと見つめた。


もう、こうなったら自棄だな……――――
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