春、恋。夢桜。
無邪気に言い放った麗華を見ていたら

何だか気が抜けたような、変な感覚がした。


安心。


一言で表してしまえばそれまでだ。


でも、何だか少し、それは違うような気もする。


「じゃあ、また麗華と一緒に過ごせるんだな?」

「あぁ。そうじゃよ?響!思う存分、泣いて喜んでも良いんじゃぞ?」


からかう気満々の麗華から、俺はそのまま視線を外した。


ついさっき気づいたばかりではあるけど

今、大切な、好きな女が目の前にいる。


この先は、もう会えないかと思ってた。


でも、また一緒にいられるかもしれないって?


こんなにも嬉しいことが、一気に自分に降りかかってきたら……


泣きたくなんてないし、泣くつもりもない。

でも少しだけ、瞳に水がたまる気分がわかる気がした。


「じゃがの、1つだけ言っておかねばならぬことがある」

「何だ?」


緩みそうになる頬にぐっ、と力を入れて、俺は麗華の方を見た。


「わしが人間になれるのは、いつになるのかわからぬのじゃ……」

「え?」
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