春、恋。夢桜。
男女混合の出席番号で決められた俺の席は、窓際の1番後ろ。


雲一つない青空が、すごく透き通って見える。

その奥には、さらに透き通った薄いピンクの塊があった。


もしかしたら、ここは俺にとってはベストポジションなのかもしれない。


あそこに見えるのは紛れもなく、カズハの桜だ。



そういえば、昼間にカズハに会いに行ったことは一度もない。


だから、昼間に月美丘の桜を見るのも初めてだった。


「お前、新入り?」


隣から聞こえた声に、思わず視線を送ってから口を開いた。


「あぁ」

「俺は、戸崎潤[とざきじゅん]。お前は?」

「櫻井響」


面倒だと思いながらも、短く答える。

そんな俺を見て、戸崎が笑った。


“特別進学”なんて名前が付いたクラスなだけはある。


茶髪やパーマの人間なんて1人もいない。

化粧に命をかけていそうな女子もいない。

制服を着くずすことに精一杯な男子もいない。


それは、隣にいる戸崎も同じだった。
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