春、恋。夢桜。
「響!せっかく少し感動しておったのに……。お主はわしをからかっておるのか!」


泣きそうな顔で必死で怒ってるような……

少しだけ笑いも含んだような表情の麗華を見たら、やっぱり笑わずにはいられない。


「そんなに怒るなよ。これでも一応、褒めたんだからさ」

「褒め言葉よりもからかう言葉の割合の方が明らかに高かったじゃろうが!」

「今までどれだけ俺と一緒にいたんだよ。俺がこういうこと言うのが珍しいことくらい、お前だってわかってるだろうが……」

「そりゃあ、そんな気がせんわけでもないが……。
たった1ヶ月程度じゃぞ?わしとお主が一緒におったのは。それで全部わかるわけがなかろう!」



『たった1ヶ月程度』


その言葉が俺の中に妙に残った。


よく考えてみれば、そんな短い間だったんだ。



そんなことを思わせないくらい

麗華との時間は濃くて、深くて、掛け替えのないものだった。


「不思議だよな……」

「え?何じゃ?」


気付かない間にぼそっと呟いてた言葉に、麗華が不思議そうな顔をする。


「何でもねぇよ。……他には?他には何も、言いたいこともねぇのかよ」
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