春、恋。夢桜。
清潔感のありそうな短い黒髪。

それによく合う、少し日に焼けた肌。


“文武両道”って言葉はこいつのためにあるんじゃないか?


そう思わせるような戸崎の外見は、この会話にあまりにも似合わなさすぎる気もする。


「なぁ、響。お前、愛想悪いってよく言われない?」

「は?」


名前を答えたからもう良いだろ……


そう思って戸崎のことは放っておいたのに、それがいけなかったらしい。

少し笑いながら問い掛けてる戸崎に、若干の嫌悪感を抱きながらも答えた。


「普通さ、何か話題を発展させねぇか?
名前聞いて名前しか答えない奴とか初めてだよ」

「へぇ。そう」


別に、こいつに普通だと思われようが、思われまいが、どっちでも良い。


どうでも良い。


別に友達みたいに親しくするわけでもない。

席が隣なだけなんだから、そこまで言われる筋合いもないだろう。
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