春、恋。夢桜。
「何か俺、いつも響に奢ってる気がする」


買ってきた昼食をお盆に乗せた潤が、俺の目の前に座った。


「人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇよ。自分で買うことの方が多いに決まってるだろ。
大体、お前はカレーしか奢ってくれないからな。いつもなんて絶対無理だ!」

「当り前だろ!カレーが1番安いんだからさ!」

「はいはい」


俺は、適当に返事をして目の前のカレーにスプーンを入れた。



潤とは何故か、志望大学も学部も学科も同じだった。


理由は違うけど希望の進路も似たようなものだったせいで、授業もほとんど同じで、毎日一緒にいる。


大学2年になった今は、学部や学科に関係なく、友達だと呼べそうな人間もそれなりに増えた。


でも、潤ほど俺のことをよく知ってて、よく一緒に過ごしてる奴なんて、他にはいない。


「そういえばさ、朝練でまたタイムが良くなったって聞いたけど?」


スプーンを動かしていた手を休めてグラスに手をのばした潤が、視線だけを俺に向けながら言った。


「あぁ。一応、自己ベストだった。お前は?」

「俺は最近駄目なんだよ。ま、もう少し辛抱してみるけどな」


そう言うと、潤はまた手を動かし始めた。
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