春、恋。夢桜。
「当り前だろうが」
俺は、視線を麗華から絵に移した。
「風景画の上手い新入生がいるって噂を聞いて来たんだ……。来て正解だって、この絵を見た瞬間に思ったよ。
この光景を知ってるのは、麗華と俺だけだろ?」
「うん。この絵を一生懸命描いて展示してもらえたら、響に会える気がしたの。……私も、頑張ったんだよ?」
首をかしげながらそう言う麗華の頭を、俺はそっと撫でた。
照れくさそうに笑う麗華を見ると、こっちまで恥ずかしくなってくる。
「お疲れ。また会えて良かった」
俺はそっと身を屈めた。
……この高さのヒールは当たりだな――――
離れたお互いの顔を覗き込みながら
2人でゆっくりと笑い合った。
俺達は、新しいスタートを切りだした。
思い出のあの場所は、これからもどんどん形を変えていくはずだ。
それでも俺達は、あの場所で過ごした春と変わらないままに。
一緒に笑い合って
喧嘩をして
触れ合って
いろいろな思いを共有して
…………―――――
これからも精一杯
できることを1つずつ、やり遂げていけるように……
俺達の笑顔と未来を見守るみたいに
隣には、『夢桜』が静かに佇んでいた。
【完】
俺は、視線を麗華から絵に移した。
「風景画の上手い新入生がいるって噂を聞いて来たんだ……。来て正解だって、この絵を見た瞬間に思ったよ。
この光景を知ってるのは、麗華と俺だけだろ?」
「うん。この絵を一生懸命描いて展示してもらえたら、響に会える気がしたの。……私も、頑張ったんだよ?」
首をかしげながらそう言う麗華の頭を、俺はそっと撫でた。
照れくさそうに笑う麗華を見ると、こっちまで恥ずかしくなってくる。
「お疲れ。また会えて良かった」
俺はそっと身を屈めた。
……この高さのヒールは当たりだな――――
離れたお互いの顔を覗き込みながら
2人でゆっくりと笑い合った。
俺達は、新しいスタートを切りだした。
思い出のあの場所は、これからもどんどん形を変えていくはずだ。
それでも俺達は、あの場所で過ごした春と変わらないままに。
一緒に笑い合って
喧嘩をして
触れ合って
いろいろな思いを共有して
…………―――――
これからも精一杯
できることを1つずつ、やり遂げていけるように……
俺達の笑顔と未来を見守るみたいに
隣には、『夢桜』が静かに佇んでいた。
【完】