春、恋。夢桜。
「今忙しくて手が離せないの!
ついでにコンビニにでも行って、2人分のお昼ご飯も買ってきてくれない?」

「わかった」


面倒だとは思った。

でも確かに、今の状態では、昼ご飯を調理する余裕なんて
母親の心にも、キッチンにもないだろう。


コンビニも探さなくちゃいけないのか……。


俺は、少し憂欝な気分を噛み潰してドアを開けた。

 

自転車に乗って門を出て、右へ曲がってみる。

色とりどりの家が並ぶ道をまっすぐ進むと、少し大きめの公園があった。


3月ももう半ばに差し掛かってるけど、風はまだ冷たい。


そんなことも気にしていないみたいに走り回る子供達は、とても眩しく見える。


あんな風に笑って走ってた時期が、俺にも確かにあったんだと思う。



でも、それはひどく遠い過去のような気がして……

俺は少し、ためらいがちに笑った。
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