春、恋。夢桜。
 

「何だか、熱ーい接吻ができそうな光景じゃのう」


相変わらず、カズハは何かを企むような笑みを浮かべたままだ。

その発言には、俺の方が恥ずかしくなった。


「キョー、お主もなかなかえろいのう。顔が真っ赤じゃぞ!」

「ば、馬鹿か、お前は!早く降りろっ!」

「仕方がないのう」


そう言いながら元の位置に座り直したカズハに、少しほっとする。


俺は、カズハが離れたことを確認してからゆっくり起き上がった。


「てか、カズハ。熱ーい接吻とか言ってるけど、お前……したことあるのか?」


カズハが前に

「人間と深く関わったことがない」

と言ってたことを思い出して問い掛けてみた。


花の精の世界でも、恋人だとか、結婚だとかはあるんだろうか。


「あるわけなかろう。わしに、他の奴等と接する機会はない」


カズハにキスの経験がないことを少し嬉しく思いつつも

他の奴等と接する機会がない、と言われたことの方が気になる。


そんな俺に気付いたのか、カズハは話を続けた。
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