春、恋。夢桜。
梨恋と俺の年はかなり離れてる。
俺は高3。
梨恋はまだ小5。
しかも小柄な梨恋は、俺と並ぶと恐ろしいくらいに小さい。
昔から童話に出てくるお姫様なんかが好きで……
本を持ってきては「読んで!」とせがまれることもしばしばだ。
「響兄!オムライスにしてっ!」
オムライスか……
冷蔵庫を開けて確認すると、一応オムライスが作れそうな材料は揃ってる。
「わかった。じゃあ、テレビでも見て待ってろ。できたら呼ぶから」
「嫌。梨恋も作るの!」
そういえば昔から、頼まれた童話の朗読を断っても、絶対に引いてくれないのが梨恋だった。
誰に似たのかはわからないけど、梨恋の頑なさは筋金入り。
俺は、はぁ、とため息を吐いた。
「わかったよ。それじゃあ向こうからお前と俺の分のエプロン持って来い」
「はぁーい!待ってて!」
ばたばたと走ってく梨恋の素直さが
少しカズハに似てるな、と思った。