春、恋。夢桜。
「やっぱり、ここからの景色は良いですね」

「あぁ。最近では場所の問題もあって花見もされなくなったらしいが、そんなにもったいないことはないだろ」

「本当ですね」


自転車を丘の近くに停めていると、階段からスーツ姿の男性が2人降りてきた。


1人は、髭をしっかりと生やした体格の良い30代前半程度の男。

もう1人は、20代前半くらいに見えるひょろっとした男だ。


花見の場所でも探してるんだろうか。


サラリーマンってのも、なかなか大変だな……――


俺もあと何年かしたら、あんな風に町を歩き回ってるのかもしれない。

本当は、そんな構想も立てなければいけない年令なんだとも思う。


でも、俺はそんなことを考えられる程、まだ大人になれてない……気もする。


何だかやりきれないような微妙な思いを抱きながら

すれ違う時に目が合ったメガネと、軽く会釈を交わした。
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