春、恋。夢桜。
家に帰って夕食を食べた時には、梨恋は両親に笑顔を向けていた。
でも、そこにはやっぱり、どこか“作った”雰囲気が残ってた気もする。
そんな梨恋を気にしながらも
俺はいつものようにジョギングに出た。
いつもみたいにカズハにも会ったけど、カズハも少し淋しそうで……
梨恋との別れの場面で見せられたカズハの強さを、俺はまた、羨ましく感じた。
「梨恋?こんな時間まで何やってるんだ?」
その次の日。
いつも通りにジョギングを終えてから家に帰ると、いつもは寝てるはずの梨恋の部屋の電気が付いていた。
俺は、梨恋の部屋を覗く。
「……!何だ、響兄かぁ……」
ドアを開けた瞬間に、梨恋はがばっ、と動いた。
上半身で机を隠して、安堵の声を漏らしてる。