春、恋。夢桜。
 

家に帰って夕食を食べた時には、梨恋は両親に笑顔を向けていた。

でも、そこにはやっぱり、どこか“作った”雰囲気が残ってた気もする。


そんな梨恋を気にしながらも
俺はいつものようにジョギングに出た。


いつもみたいにカズハにも会ったけど、カズハも少し淋しそうで……


梨恋との別れの場面で見せられたカズハの強さを、俺はまた、羨ましく感じた。




「梨恋?こんな時間まで何やってるんだ?」


その次の日。

いつも通りにジョギングを終えてから家に帰ると、いつもは寝てるはずの梨恋の部屋の電気が付いていた。


俺は、梨恋の部屋を覗く。


「……!何だ、響兄かぁ……」


ドアを開けた瞬間に、梨恋はがばっ、と動いた。

上半身で机を隠して、安堵の声を漏らしてる。
< 67 / 237 >

この作品をシェア

pagetop