春、恋。夢桜。
【三】
「なぁ戸崎、この辺に本屋ってないか?」
「本屋なら学校の目の前にあるだろーが」
「いや、あんなちっさいぼろ本屋じゃなくてさ。品揃えが良さそうな、大きい所だよ」
「あぁ。なるほどね……」
そう言うと、戸崎は腕を組んで
何かをぶつぶつと呟いて考え出した。
「近くのショッピングモールに結構大きめの本屋が入ってるんだよ。
検索システムなんかも付いててさ、なかなか評判が良いんだけど、場所を口で説明するのは難しいんだ。
部活が終わるまで待っててくれるなら案内するけど?」
「部活って、いつ終わるんだ?」
「今日は6時頃に終わると思う」
6時か……。
それだったら、その後に家へ帰っても十分夕食には間に合うはずだ。
「わかった。じゃあ待ってるよ」