春、恋。夢桜。
カン、カン、と鈍い音の響く金属の階段を進んで、部室の前に立つ。
「戸崎潤、入りまーっす!」
所々が茶色く錆びた白いドアをノックしながらそう言うと
戸崎はゆっくりとドアを開けた。
中に入る戸崎に、戸惑いながらも続く。
「潤、そいつ誰?」
着替えの途中だったのか、黒いジャージのズボンだけを履いた男が言った。
手足が長くて、背も高い。
見るからにスポーツの得意そうな奴だった。
「あぁ。俺と同じクラスの響だよ。
この後ちょっとデートだから、ここで待たせてやって?」
「デート……ってお前、デタラメなこと言うなよ」
「2人で出掛けるんだから間違いじゃねぇだろ? 行き先は本屋だけど……」
「キョウって……。お前もしかして……櫻井響、か?」