春、恋。夢桜。
「で?何でいきなり本屋なわけ?
てか、引っ越してから1回も本屋に用なかったのかよ!?」
予定通りに、6時頃には陸上部の練習が終わった。
汗臭さといろいろなスプレーの匂いで窮屈になった部室を、俺は思わず飛び出す。
部室の外で戸崎を待ってから、ショッピングモールまで連れていってもらうことになった。
途中、赤信号で止まったところで戸崎が口を開いた。
「あぁ。俺は別に本とか読まないから」
「漫画もか?」
かなり驚いた顔をする戸崎に、俺は思わず溜息を吐く。
「お前、漫画ばっか読んでるのかよ。本屋に通いつめるくらい……」
「そこまでじゃねぇよ。
大抵、参考書を立ち読みして、漫画だけ買って帰るんだよ」
「漫画は買うのに参考書は買わねぇのかよ」
「当たり前だろーが!参考書に金使うなんてもったいないって!
でも、漫画は人生のバイブルだからな。買わないわけにはいかねぇよ。
参考書は立ち読みしてる間に暗記すれば問題ない!」