春、恋。夢桜。
【四】
あの後、戸崎は漫画コーナーへ迷うことなく歩いて行った。
迷わずそんな戸崎を無視して、自分の買い物に専念をすることに決める。
一応ここに来る前にあいさつはしたし、どうせ帰る方向も違うんだから、戸崎のことは放っておいてもかまわないだろう。
その後は、同じ建物の中にある適当な雑貨屋へ行った。
もともと、行く予定なんてなかったんだけどな……
買い物がすべて終わってから
ケータイを手に取って、無理矢理交換させられた戸崎の連絡先を呼び出す。
あいつはまだ、漫画でも選んでるんだろうか?
何となくここまで案内をしてくれたお礼のメールを送ってから
俺はそのまま、月美丘へ向かった。
学校の荷物とさっきの買い物の荷物の重みで、階段を登るスピードは少し遅い。
「カズハー!!」
「何じゃ? キョー」
不思議そうな顔で、カズハはひょこっと枝から顔を出した。
「上、上げてくれないか?」