春、恋。夢桜。
 

昨日、梨恋からの手紙をカズハに渡した時。

カズハは「字が読めないからダメだ」と言った。


手紙を読むことができない、と。


そして、その悲しそうな顔を、俺はそのまま見ていることができなかった。


梨恋に対して。

そして、カズハに対して。


その時、思ったんだ。


このまま引き下がることだけはしたくない。


したらいけないんだ……って。


そして、考えた方法がこれだった。


“カズハに字を練習してもらう”


俺が読んでやってもいい。

でも、手紙の魅力は一読以上できることだと思う。


だから、遠回りな方法かもしれないけど、カズハに字を覚えてもらうことにしたんだ。


「キョー。また、困ったことがあるのじゃが……」
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