春、恋。夢桜。
漢字がどういうものか……
そんなこと、今までに説明したことがない。
当たり前のように学校で習って使ってきたんだ。
それがどんなものかなんて、考えたこともなかった。
どうすれば良いのかわからなくなった俺は
カズハの名前の下に、自分と梨恋の名前を書いた。
「これがひらがな。真ん中がカタカナ。1番下が漢字だ。
それで、こっちが俺の名前で、下が梨恋の名前だ」
「ほう。同じ名前なのに3つも書き方があるんじゃのう」
「あぁ。でも、漢字は同じ読み方のものがたくさんあるんだ。梨恋や俺の漢字は、その中から俺達の両親が選んで付けたものでさ。
だから、カズハの名前を漢字で書くことができないんだよ」
せっかくだから、少しでも多くのことを教えてやりたい。
でも、名前がひらがなの人だってたくさんいるし、こればっかりは仕方がないのかもしれない。
そう思いながらもどうしようかと悩む俺に
カズハが明るい声で言った。