春、恋。夢桜。

「それじゃったら、教えてくれても良かろう!?何で教えてくれぬのじゃ!」

「何でもだ!」

「きょう!」


本気で不満足そうな顔をするカズハに曖昧な笑みを返しながら
俺は電子辞書を片づけた。


辞書に書いてあった意味で、俺が気に入ったのは次の2つ。


『麗』の『澄んでいてきれいなさま』という意味。

そして『華』の『色つやのあでやかなさま』という意味。


この意味をカズハに言うのは、少し躊躇う。



褒めすぎだろ? さすがに……――――



俺は、ぶつぶつと話し続ける麗華の言葉を、無理矢理遮った。


「麗華!
俺はそろそろ1回家に帰らないといけないから。下に降ろしてくれないか?」

「……わかった」


まだ、納得したというわけではないと思う。

それでも、麗華は俺の手を持つと、ふわっと飛び上がった。

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