春、恋。夢桜。
地面に降りてから、鞄を持ち直して麗華を見る。
「じゃあ、後でもう1回来るから。
それまでにわからないこととかあったら、後で教えてやるよ」
「わかった。なぁ、きょう。りこにも、わしの漢字が決まったと伝えてくれぬか?
あと、手紙をしっかりと読めるようになるまで頑張る、と」
「わかった。ちゃんと伝えておくから安心しろ」
そう言うと、麗華は嬉しそうに笑った。
「約束じゃぞ! きょう!」
「おう。じゃ、またな!」
軽く手を挙げてから、麗華に背を向ける。
背中では、麗華が笑ってるような気もした。
ひらひらと花びらを散らす桜は、その行為をやめる気配もない。
きっと、堂々と一気に咲き誇るの姿と
潔く散っていく姿の両方が、桜の美しさなんだろう。
少し、もったいないけどな。
そう思いながら、俺はそのまま、月美丘を下りた。