春、恋。夢桜。
ゴールした瞬間には、顧問の「よしっ」という声が聞こえた。
それに、安心して足を止めて、両手を膝について少し休む体制に入る。
でもその直後、俺の右足に激痛が走った。
それと同時に、右側に何かの重みも加わる。
「おい!大丈夫か?櫻井!加藤!」
そのまま地面に倒れ込んだ俺に、顧問から緊迫したような声がかけられた。
いや、正確には俺達……か。
俺の右側にかかった重みの正体は、俺の右側のコースを走っていた加藤だった。
「右足首にある骨が折れていますね。骨と言っても、足の奥にある小さなものですが」
目の前には、白衣を着た男。
医者にしてはまだ若いけど、手術の腕も良く、評判が良いらしい。
「お友達が倒れた時に、右足に彼の足がぶつかったと聞きました。
彼もゴールをした後だったそうですけど、結構なスピードで走っていたみたいですからね。衝撃はそれなりのものだったんじゃないかな」