春、恋。夢桜。
走り終わって力の抜けた加藤が、俺の方に思わず倒れ込んでしまった。
その結果、俺は骨折し、大会には出られなくなった。
そして代わりに、擦り傷だけで済んだ加藤が、大会に出ることになった。
今回の出来事をまとめると、つまりはこういうことだ。
でも、俺は見た。
加藤が、陸上部の同級生達と笑い合っている姿と
彼等の、「計画以上だな」という言葉……――――
俺は別に、オリンピックで活躍するような、プロの選手を目指してたわけじゃない。
それでも、こうやって部活で走っていられることが好きだったし、これからも続けていきたいと思ってた。
走ることが、俺の世界を作り上げていた……
そう言っても、過言ではないと思う。
でも、そんな世界が奪われた。
加藤だって、あんなことをした奴だけど、本当は思いやりのある人間だと思う。
何にでも一生懸命に取り組む良い奴だと、俺は思う。
一生懸命になりすぎて、少し間違ってしまっただけだと、俺は思う。
思っては、いる……