先生、キライ!
16
「先生、あのね……」


「なんだ?」
 ある日の放課後、私はとうとうヤスオちゃんを誰もいない教室に呼び出した。

「先生が好き。恋人いるって分かってる……でも好きなの!どうしようもないの。だって、先生のおかげで、いじけてた私が少し真っ直ぐ前を見られるようになったんだもの。それに、勉強だって今まで親や先生にブツブツ言われるのが、だるくって文句言われない程度に適当にやってただけで、それに、親や先生なんか、だいっキライで……だって、だれもきちんと話してくれないから、どうしていいのかわからなくって……」

 ヤスオちゃんは私が告白している間、じーっと黙って耳を澄まして聞いていてくれた。それが嬉しくて、泣きたくなった。だって、誰もこんなにちゃんと話を聞いてくれなかったんだもの……

「それで、だから、私、先生のこと、ただ関心があるだけだって思ってたの。でも、先生の恋人に会ってから、気づいちゃったんだよぉ!自分の気持ちに。だから……抑えきれなくて……迷惑だって分かってる。でも、でも、どうしようもなくて……気持ちが溢れてどうしようもなくて……ごめん、こんな生徒イヤだよね……手が掛かってごめん……」

「何で謝るんだ?石野は悪いことしてるのか?」

 私はドキンとした。首を横に大きく振った。

「石野の気持ち、きっと俺の方が先に知ってた」

「……」

「さんきゅう。スゲエ嬉しい」


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