先生、キライ!
5
この四月、私は新米教師で数学担当の近藤康夫先生と知り合った。
今年教師になりたてで、うちの高校に赴任してきた。背が高くって、めがねをかけている。ちょっとカッコつけた気取り屋。怖そうな雰囲気。何を考えているのかわかんない。数学の教師だって。
一部の女生徒達は、かっこいい!と勝手に騒いでいたけれど、そいつだって、きっと、また、ふつうの大人。
ふつうの先生。
誰も私の気持ちは分からない。
誰にも期待しない。
それだけのこと。心にうまく、バリアーを張って、誰も入れてあげない。
遠くで見ていた新米教師が、私たちの数学を受け持つことになった。
授業なんて誰も真剣に聞いてはいないのに、冗談も言わずに、汗かきながら黒板に向かって授業してる。生徒に背中を向けての授業なんて笑えるね。
「近藤先生、この問題もう一度教えてください」
「えっと、君の名前は?」
「石野由香です」
「出席番号一番?」
「だと、思いますけど」
「じゃあ、一番に覚えるよ」
これは、駄洒落で笑うところなんだろうか?笑顔が引きつってる。それでも、私に理解させようと必死だ。頑張ってるよなあ、と、感心していると、
「わかった?」
綺麗な目で真っ直ぐに見つめられて、正直ちょっとドキドキした。だって、私の投げかけた言葉にこんなに真剣に答えてくれた人ははじめてだったから。
私は小さくうなずいて、細い声でありがとうとだけ言った。近藤先生は、ちょっと戸惑った表情を泳がせながら、また、黒板に向かって授業を再開した。
今年教師になりたてで、うちの高校に赴任してきた。背が高くって、めがねをかけている。ちょっとカッコつけた気取り屋。怖そうな雰囲気。何を考えているのかわかんない。数学の教師だって。
一部の女生徒達は、かっこいい!と勝手に騒いでいたけれど、そいつだって、きっと、また、ふつうの大人。
ふつうの先生。
誰も私の気持ちは分からない。
誰にも期待しない。
それだけのこと。心にうまく、バリアーを張って、誰も入れてあげない。
遠くで見ていた新米教師が、私たちの数学を受け持つことになった。
授業なんて誰も真剣に聞いてはいないのに、冗談も言わずに、汗かきながら黒板に向かって授業してる。生徒に背中を向けての授業なんて笑えるね。
「近藤先生、この問題もう一度教えてください」
「えっと、君の名前は?」
「石野由香です」
「出席番号一番?」
「だと、思いますけど」
「じゃあ、一番に覚えるよ」
これは、駄洒落で笑うところなんだろうか?笑顔が引きつってる。それでも、私に理解させようと必死だ。頑張ってるよなあ、と、感心していると、
「わかった?」
綺麗な目で真っ直ぐに見つめられて、正直ちょっとドキドキした。だって、私の投げかけた言葉にこんなに真剣に答えてくれた人ははじめてだったから。
私は小さくうなずいて、細い声でありがとうとだけ言った。近藤先生は、ちょっと戸惑った表情を泳がせながら、また、黒板に向かって授業を再開した。