俺のシンデレラになってくれ!
眉を寄せたあたしのことに、店長は久々に視線を合わせた。
店長が何を言いたかったのか、結局あたしはわからないままだ。
でもこういう、何かよくわからない雰囲気のままで終わる会話も、店長の言葉を借りるなら若い間には経験しておくべきなのかもしれない。
「そんなわけで篠原、この店を”美”だと認めてもらうために、いつも以上に真剣に客席をチェックしてきなさい」
「え、何の話ですか?」
「お客さまに来ていただくためには、努力が必要なんだよなー」
ウチの大学のフリーペーパーの話はもう終わったらしい。
レジの下にある忘れ物入れに入れられた雑誌を軽く見てから、机を拭くための付近を取りに行く。
頼んだって、店長がチェックを変わってくれるわけじゃないのはわかってる。
「じゃあ、ちょっと努力してきまーす」
「ちょっとじゃなくて、それなりに努力してこいよー」
背中で店長のけだるい声を受けながら、あたしは2階へ続く階段をのぼった。
何となく駆け足になったのに、きっと深い意味はない。
一気に階段を駆け上がってから、あたしは大きく、息を吸い込んだ。