俺のシンデレラになってくれ!
「はーい、お疲れー。また明日」
レジのあるカウンターでお金を数える、やる気のなさそうな店長に軽く頭を下げる。
店長のあの雰囲気は、1階に厨房とレジ、2階に客席が作られてるウチの店だからこそ許されるものだと思う。
……他の店に行ったらどうするつもりなんだろう。
「さむっ」
ぼーっと考えてたせいか、思わず震えた体に合わせて、マフラーにあごをうずめた。
今年の冬は、例年よりも冷え込むでしょう……だっけ。
電車の掲示板に流れるニュースが、そんな話を教えてくれてた気もする。
フライングで冬みたいに寒かった11月。
それだけでもどうにかなりそうだったのに、“12月”っていう肩書を手に入れた途端に寒さは余計にひどくなった。
何かもう、来月辺りを生きていける気がしない。
1限のない日は、まだ真っ暗なうちに家を出て、やる気のなさそうな店長が率いるファーストフード店でバイトをして、大学へ行く。
授業が終わってからは、またバイトをしたり、そのまま家に帰っておばあちゃんとご飯を作ったりする。
どこかに遊びに行くようなことはめったにない。
気が向いたら洋服なんかを買いに行くこともあるけど、年単位で見ても片手で数えられるくらい稀な話だ。