俺のシンデレラになってくれ!
「でもさっき、サークルには入ってないって言ってたからちょうどいいかと……」
「ちゃんと話は聞いてたんだ」
呆れて溜息を吐いたあたしの両肩を、篤はがしっと掴んだ。
向き合うみたいな形になって、思わず目を見開く。
「結に入って、俺のシンデレラになってくれ! 俺のシンデレラには美砂がぴったりなんだ!」
しっかりと響く篤の言葉に、思わず眉間を固くした。
“シンデレラ”の詳しい内容は全くわからないままだけど、その辺りは篤の中で簡潔してるらしい。
……そんなの、自分勝手にもほどがある。
「サークルに入ってないってとこは聞いてたらしいけど、生産性がどうこうってところは聞いてなかったんだな」
「そうみたいね」
さらっと言葉を放つ晴香と雅也を、思わずじっと見つめた。
「サークルなんてお金のかかるもの、やるわけないでしょ!?」
静かにそう言ってから、視線を篤に戻す。
「演劇もシンデレラも、あたしとは無縁だわ! 行くよっ!晴香」
「え? ちょ、ちょっと待って!」
焦ったような晴香の声を無視して、あたしは席を立った。
お弁当箱を片づけて、鞄をつかむ。
「それじゃあ。もう会うこともないと思うけど」
それだけ言って雅也にだけ軽く頭を下げてから、みんなに背中を向けた。
「ちょっと! 美砂!?」