俺のシンデレラになってくれ!
……冗談じゃない。
お金もない。
篤みたいにきらきらした目も持ってない。
そんなあたしがシンデレラ?
女の子の憧れのお姫様なんて思われちゃって、シンデレラストーリーなんて言葉にまでなっちゃうアレ?
……似合わなすぎて、吐き気がする。
食堂の自動ドアを開けると、冷たい空気が一気に顔にぶつかって来た。
そんな空気をさけたくて、思わず視線を足元に落とす。
茶色いタイルの階段の上に、もう何年も履いてるスニーカーをとんっと乗せる。
ハイカットのデザインが気に入って買った黒いスニーカーは、底もすり減ってきてるし、だいぶ汚れも目立つようになった。
……こいつのせいで何回も靴擦れして、その痕が今も消えないんだよね。
「お似合いじゃん。スニーカー……」
晴香はまだ、食堂から出てきそうにない。
きっと、荷物を整理したり、食べ終わった食器を片づけたり、……。
あたしの代わりに、あたしがこなごなに壊してきた空気を取り繕ってくれてるんだと思う。
「よっし」
次の授業が始まるまでには、もう少し時間がある。
そうは思ったけど、特に行く場所もない。
あたしは、そっと、4限の教室に向けて足を動かした。