俺のシンデレラになってくれ!
そう言いながら晴香が指を指した先には、開け放ったドアの先でよくわからない踊りをする篤がいた。
グレーのパーカーに黒のだぼっとしたジャージを着た篤は、ホチキスで片側だけ止められた紙を見ながら、足をあげたり、両手をくるくる回したりしている。
「何やってるんだろう?」
「さぁ? 美砂もあたしも、こーゆー知識は皆無だもんねぇ……」
「うん。未知の世界だわ」
ドアの陰にそっと体を預けながら、ぼーっと部屋の中を眺めた。
部屋は広いけど、中にいるのは篤も含めて4人だけだ。
くりっとした目が印象的な元気そうな男の子。
それに、ふわふわした髪が可愛い女の子。
もう1人は、がっしりした体型の割に目元がすっとした、男の人。
うん……男の人って表現が似合う気がする。
雰囲気もバラバラな4人が、同じような紙を手に持ちながら向き合う姿は、何となく面白い。
……まぁ、あたしには関係ないんだけど。
「もしかして、入会希望者?」
「へ?」
背中側から聞こえた声に、晴香と一緒に振り返る。
思ってたよりも高い位置から聞こえてたらしいその声に合わせて、あたしはぐっと顔を上げた。
「中途半端な時期ではあるけど、歓迎してくれると思うよ?」
そう言って、目の前の男の人はにっこりと微笑んだ。
服装のせいかな?
ベージュのスーツに、きっちりとしたストライプのネクタイがぴったりなその人は、学生にも見えるし、そうじゃないようにも見える。
「あ、入会希望ではなくて。知り合いがいるって聞いたので、少し見学に……」
「そっか。じゃあ、一緒に覗いていく?」