俺のシンデレラになってくれ!
お昼休み。


睡魔と格闘しただけで終わった90分を思い返しながら、あたしは溜息を落とした。



教育学部……なんてちょっと真面目そうな学部に進学したけど、実際の学生生活は真面目とは対極に近い気がする。


これで教員免許がとれちゃって、試験に受かれば教員にもなれちゃうんだから、すごい世の中だ。


……まぁ、みんながみんな睡魔と格闘してるわけじゃないとは思うんだけど。



「うーん、さすがに12月になると学食もいつもよりすいてるねぇー」



おおまかに文系の講義棟が並ぶこの敷地内には、食堂は2つ。


そのうちの大きい方を覗きながら、隣に立つ晴香がぼーっとつぶやいた。


セミロングのつやつやとした茶色い髪は、太陽を上手く利用しているように見える。



「3年生の就活組が抜けてるんじゃない?あと、学食に飽きてきた1年生と“サボり”を習得した1年生も」



空いてる席に荷物を置きながら答える。


学部だけじゃなくて、学科も同じ国語科だった黒川晴香[くろかわ はるか]とは、最初の授業で隣の席になったことがきっかけで話をした。


雑誌から飛び出したみたいなきらきらした格好をしてるくせに、さらさらと何でも話す。


たぶんそれが、晴香に対する第一印象だったと思う。


お互いに気の合うことがわかってからは、大学にいる間はたいてい2人で過ごすようになった。



「就活かぁ……。卒業してからのことなんて考えたくない! 面倒臭いっ!」


「まぁいいんじゃない? それより、今は早くご飯にしようよ」
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