俺のシンデレラになってくれ!
腹が立って、手元に残っていたから揚げの塊をそのまま口へ放り込む。


そんなあたしを見て少し焦ったのか、篤が急いで言葉を続けた。



「いや、そう意味じゃなくて! せめて、俺のやりたいことがどんなものなのかをちゃんと知ってから、ちゃんと判断してほしいんだよ」


「ちゃんとって……、サークルで劇をやるんでしょ?」


「じゃあ、美砂の思う“サークルでやる劇”ってどんなの?」



にっこりと笑いながらそう言われて、思わず頬に力が入った。


それに気づかれたくなくて、慌てて口を開く。



「そりゃあ、ちゃらちゃらしてて」


「何で?」


「だって、サークルでしょ? お遊びみたいなもんじゃない」


「お遊びね……。それ、他の場面で言っちゃだめよ。キレる人がきっとたくさんいるから」



呆れたように口をはさむ晴香を見て、小さく肩をすくめる。


そんなあたし達を見て少し笑うと、篤がまた話を進めた。



「サークルって条件抜いたら? 演劇自体は、きちんとしたイメージなわけ?」


「きちんとしたっていうのがどんなのかはわからないけど……。どっちかっていうと“きちんとした”ものとは真逆の世界の産物だと思う。
きらきらしたところで、くるくる踊って、人を楽しませて、……。完全なる娯楽だし」


「その“娯楽”に一生懸命になってる人間の前でそこまで言えるって、美砂は天才だな」



……さすがに、言いすぎたかもしれない。
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