俺のシンデレラになってくれ!
そう思って静かに視線を上げると、からからと面白そうに笑う篤が目に入る。


びっくりして目を見開くと、その反応さえ面白かったのか、篤はさらにしわを深くした。



「でも!別に“娯楽”自体を否定してるわけじゃないから!そのおかげで楽しめる人も、救われる人もたくさんいるんだと思うし。
だけど、そういう派手な世界はあたしには似合わないし、向かないから。だから、シンデレラもお断りなの!」



笑われたのが悔しくて、思わず続けたあたしの言葉は、篤をさらに笑顔にするだけだったらしい。


予想外なタイミングで今日一番の明るい顔を見せられて、あたしだってどうしたらいいのかわからなくなる。



「まぁ、そういう妙にがっしりしたところが美砂っぽいんだけどねぇー。篤もそう思うから笑ってるんでしょ?」


「晴香ちゃん、さすが。俺の頭の中まで読んでるとこがすごいよね」


「昔から、そーゆーとこには気を遣ってきたからねぇ。美砂はわかりやすいから気を遣う必要もないんだけど」



さらっとそう言いながら片付けを始めた晴香を、そっと睨み付ける。



「それ、2人であたしのことバカにしてる?」


「いや、バカにしながら褒めてる。ね、篤?」


「うん。褒めてる方重視だから」



全然嬉しく感じないのは、あたしがひねくれてるからか。


いや、そんなことはないと思う。



「まぁでもとりあえず、美砂が“娯楽”だっけ?その部分に否定的じゃない分だけ安心したよ。俺のことを理解してもらう余地もありそうだなって」


「あたしにそんな余地はない」


「気持ちのいいくらいすぱっと言い切るねぇー」
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