俺のシンデレラになってくれ!
今更、何を言ってるんだか。


真正面から何回叩き落とそうとしても、篤の態度は全く変わらない。


叩いてもしぶとく起き上がってくる、ビニールでできた懐かしい感じのおもちゃみたいに。



「大体、バイトと授業で空き時間なんてそんなにないし、あっても篤と過ごすような無駄なことしたくない。あたし達は友達でもないわけだし、今だって好きで一緒にいるわけじゃないんだから。
篤に付き合う時間があるくらいなら、あたしはバイトする」


「バイトかぁ……」



そうつぶやくと、篤は少し黙り込んだ。


眉間にしわを寄せながら、ぼんやりと近くの何かを眺めてる。



「今のバイト、時給はいくら?」


「え? 900円だけど……」


「じゃあ、俺は1000円出す」



何言ってるんだ、こいつ……。


そう思ったのはあたしだけじゃないみたいで、隣の晴香もびっくりしたように眼を見開いてる。



「でも、毎回現金を渡すってのも気が引けるしなぁ……。時給分、何か奢るよ」



そんなあたし達のことなんてお構いなしに、篤は顎に手を当てながら言葉を続けた。



「いや、意味がわかんないんだけど! 時給って何?奢るって?あたしに給料を払うってこと? 何でそこまで……」


「そこまでしたいって考えるくらい、“シンデレラ”にこだわってるんだって、思ってくれない?別に、時給はまとめて請求でもいいから」
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