俺のシンデレラになってくれ!
にっこりと微笑まれても、もやもやは消えない。


こんな非日常的なことに対応できるような柔軟さは、あたしの中にはない。



「そしたら服でもプレゼントしてもらえば?美砂、いつも同じような格好ばっかだし。あ、いっそ、靴のがいいか。シンデレラだし」


「晴香、何でこんな意味不明な提案に馴染んでるわけ?あたしをバカにしながら普通に返さないでよ」


「いや、晴香ちゃん、それいいよ! 女の子が綺麗になるの、俺も好きだし」


「でしょー! あたしもおしゃれに気を遣う美砂を見てみたい!」



勝手に話を進めないでよ……。


思わず溜息を落としたあたしを見て、晴香が小さく笑う。



「まぁいいじゃん。美砂も気楽に考えたら? あたしは時給なんて別にいらないと思うけど……美砂的にはラッキーなんじゃないの?タダで服とか靴が手に入るなんて」


「でもっ!」


「それが重いなら、別にご飯とかお茶とかをごちそうになればいいんじゃない? 浮くわよ、食費」


「食費……」



食費は大きいかもしれない。


しかも、時給1000円ってなかなかない条件だ。


スーパーだったら普通に……。


こんなことを考えるあたしは、やっぱり2人が言うみたいにバカなのかもしれない。


そんなあたしの様子を見て、晴香と篤はにっこりと笑いあった。
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