俺のシンデレラになってくれ!
「立ち直るの早いな。何か悩み事でもあんの? 若いって大変だね」
「悩みの有無に若さは関係ないと思います。店長は若い頃も悩みなんてなさそうですよね」
「篠原、それ少しバカにしてる? 店長はいつも悩んでますよ。カウンターで溜息吐きながらサボってるバイトがいるからねー」
「それは大変ですねー。悩み事があるなんて、店長もまだまだ若いんですよ。よかったじゃないですか」
ぼーっと、手元にあったクーポン券を手に取りながら答える。
「返事に心がこもってないんだけど。さっきから」
「こめてませんからね」
「……やっぱり若いねぇ」
小さく笑いながらそう言うと、店長はさっと背筋を伸ばした。
不思議に思って見上げると、無言のまま顎と目で店の外を指される。
お客様か……。
“いらっしゃいませ”
そう笑顔を作ろうとして、あたしはそのまま固まった。
「うわー!本当に美砂いたし! 俺ってラッキー」
「それに付き合わされる俺の身にもなれ、バカ」
固まるあたしのことなんて目に入ってないのか、気にしてないのか、目の前で淡々と篤と雅也の会話が進む。
「若いっていいねぇ」
小さく笑う店長を軽く睨んでから、あたしはまた溜息を吐いた。