俺のシンデレラになってくれ!

にっこりと微笑んだ晴香に思いっきり苦笑いを返した。



楽しみにされたって、少し髪型を変えたくらいじゃどうにもならないと思う。


髪型も服装も、見た目にはそんなに興味がないから、別にどうしてもらってもいい。


ただ、篤に言われたままにいろいろと進んでいくのは、何となく面白くない。



「じゃあ、雅也くんと……えーっと、晴香ちゃんはまた今度。篤は大人しくしててよ。ここにいることは、咲にも伝えておくから」



くるっとドアに向かって歩き出した紬さんを慌てて追いかける。



何か、今日はこんなことばっかりな気がする……。


こっそり溜息を落としてから、あたしはまた、きらきらした店内に入った。


 4


「先に髪を洗いたいから、奥のシャンプー台にどうぞ」


「あ、はい。お願いします」



受付の横をすり抜けた奥。


明るい店内の中心には、大きな鏡がたくさん並んでいた。


鏡を挟むみたいな形で置かれた黒いイスは、どこもお客さんでいっぱいだ。


案内してもらったシャンプー台のある部屋は暗くて、切り離されたような空間に、少し不思議な感覚になる。



「美砂ちゃんだよね? 篤、何か迷惑かけてるんじゃない?」
< 61 / 134 >

この作品をシェア

pagetop