俺のシンデレラになってくれ!
髪を洗いながらそう聞かれて、あたしは必至で言葉を探した。
「あー……でも、いろいろと気を遣ってくれてくれてるみたいなので」
「何か想像できるかも。昔から1つのことに集中すると周りが見えなくなっちゃうタイプだからね。付き合ってくのは大変かもしれないけど……美砂ちゃんにとってマイナスになるようなことはしないと思うから許してあげて。
姉目線だから篤に肩入れしちゃう辺りは申し訳ないんだけど」
視界が閉じられてるからわからないけど、笑いながらそう言う紬さんが、何となく想像できる。
きっとすごく優しい人なんだろうな。
単純かもしれないけど、そう思ってあたしも静かに頬を緩ませた。
「篤って、昔からあんな感じなんですか?」
「うん。上に女が4人もいるからか、小さい頃から割と1人でぼーっとしてることが多かったかな。両親が美容師だったのもあって、あたし達の会話も自然にそんな方向になって……。
篤は会話についてくるのが大変だったのかも。ぼーっと考え事したり、いきなり家の中を走り回ったり、意味わかんないところで会話に入ってきたり、……。割と自由人だよね」
「その辺り、今と変わりませんね」
「そうなの!しかも、ウチの両親も適当な人でさー。あたし達4人の名前、上から咲、紬、光、葉なんだけど、何でかわかる?」
何でいきなり名前の話なんだろう?
そう思いながら考えるけど、理由なんて思い浮かばない。
「双子のうち、先に生まれたからサキ、次に生まれたからツギ……だけど、それだと変だからツムギ。3人目だからミツ。で、4人目だからヨウ」
「それだと、篤だけ浮きますね」