俺のシンデレラになってくれ!
脱いでいたジャケットをさっと取り上げると、篤はふわっとドアの方に歩き出した。
あたしも急いで自分の荷物をまとめて、後を追いかける。
最後に振り返ってもう1回紬さんに頭を下げると、にっこりと笑いながら手を振ってくれた。
外に出て寒さに肩を震わせながら、お店の前に立っていた篤に声をかける。
「あたし、咲さんに挨拶してないけど大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。紬と顔一緒だし」
そういう問題じゃないと思うんだけど……。
もしも今度会う時があったら、ちゃんとあいさつして謝っておこう。
駅に向かう篤の隣を歩きながら、そんなことを思う。
隣の篤は、それ以上口を開くこともなく、ただポケットに両手を入れたままぼーっと歩いていた。
そういえば、こうやって2人で歩くのは初めてかもしれない。
何だかんだで、普段は晴香と雅也がいる。
いつもはうるさいって思ってたけど、2人がいないだけでこんなにも静かになっちゃうなら、いてくれた方がありがたい。
「俺、少しだけ買い物してから帰るから。ここで解散でもいい? もしかしたら、ここで家まで送るのが普通なのかもしれないけど……」
「え?いや、それ普通じゃないと思う。マンガじゃないんだから……。じゃあ、また明日」
「うん。あ!明日それ、絶対だからな!」