俺のシンデレラになってくれ!
まっすぐあたしの方を指してきた指に首を傾げてから、篤の言いたいことがわかって軽く頷いた。
「この服のこと?」
「そうそう」
女の人のものを売ってるお店に行って、彼女でも何でもないあたしの服を選ぶのが楽しいのか。
そんな風に言える篤が、何となく羨ましい気もする。
「ふと気づくと、周りの女の人から不思議な視線が飛んできてるのに気づくんだけどさ。基本的には選ぶのに集中してるからさ。
服も、靴も、頭の中でいろいろ組み合わせを考えていくのってパズルみたいで楽しいんだよ」
「そういうもんなんだ」
「そういうもんなの。最終的にそれが俺のシンデレラに繋がっていくって思ったら、それはそれで楽しいし。
そもそも、いろんなことを抜きにしても人に渡すものを選ぶのって楽しいじゃん。
美砂もない?誕生日とかクリスマスとか、バレンタインとか」
「どうだろ?あたし、誕生日ともクリスマスともバレンタインとも無縁の生活してるから。
特に誰かにプレゼントした記憶もないし、された記憶もないな」
幼稚園の頃までの本当に幼い記憶の中でなら、両親とケーキを囲んだ記憶もある。
でもその記憶は少し古すぎて、篤の例えにはあてはまる気がしない。
おばあちゃんとおじいちゃんの誕生日は知らないし……。
よく考えてみたら、あたしは晴香の誕生日だってちゃんと知らない。
「美砂、誕生日いつ?」