俺のシンデレラになってくれ!
「3月。篤は?」
「5月。もうだいぶ前に終わった」
「じゃあやっぱり、あたしは誕生日とは無縁だなー」
人の誕生日を覚えるのは苦手だし。
それは、歴史の年号を覚えられないのと似た感覚な気がする。
大勢で騒ぐのも得意じゃないから、そうやって人に何かをあげたり、何かを一緒に祝ったりする機会も特にはない。
そもそも、大学とバイトいっぱいのあたしの生活の中には、何かを一緒に祝うような知り合いもいない。
この何日かで忘れかけてたことを思い出して、あたしは小さく息を吐いた。
「でも、クリスマスはもうすぐだろ? あと20日くらい?」
「それも無縁。どうせバイトだし。飲食店的には稼ぎ時だからね」
「……大変だな、美砂も」
苦笑いを浮かべる篤を見てから、何となく時計に視線を移した。