苦く甘い恋をする。
逆説的な好き?
エレベーターの中、長谷川くんはコートを脱ぐと、それをふわりと私の肩にかけた。
「……え? 何?」
可愛くないとわかっていても、この男の優しさを完全には信じることが出来ず、私は目を細くした。
これぐらいで、私は懐柔されない。
これぐらいで、ありがとうなんて、言ってやらない。
威嚇するかのようにギッと目に力を込める私を、エレベーターの壁に体を預ける格好で腕を組んだ長谷川くんが、静かに見下ろす。
「何……って。さっき、寒いって怒ってただろ?」