苦く甘い恋をする。
「いきなり、しおらしくなるなよな。
調子狂うだろ」


「…………」


「何? おまえ……。そんなに恥ずかしいの?」


「…………」


「だったら、なおさら。俺、逃がさねぇよ?」


面白がるような声が響く。


「や、だから。別に……。何でもないって!!」


悲鳴のような声は出せても、体を動かすことのできない私のニットの袖を軽く摘まんだまま、長谷川くんは私の後ろから、耳に向かって軽く囁きかけた。
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