苦く甘い恋をする。
何を言っても、違う気がして。


何を言っても、恥ずかしい気がして。


私には続きが言えなかった。


きっと、私がおかしいのは、お酒のせい。


だから、こんなに近くにいるのに、寂しいに違いない。


そうこうしているうちに、タクシーはマンションの前で止まった。


「あ、じゃ。ありがと……」


長谷川くんの温かい手をするりとほどいて、私はタクシーを降りた。
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