苦く甘い恋をする。
……今日は、おやすみのキスとか、してくれないんだ。ちぇっ。


そんなことを思いながら、エントランスまでの道を歩き出すと……。


――ゴロゴロゴロ……。


スーツケースを転がすような音が聞こえた。


……えっ? まさか!?


……嘘でしょ? だって。


そう思って振り向いた先。


「おやすみのキスは、今日は、ベッドの中でしてやるよ?」


スーツケースを転がしながら私の隣まで来て、長谷川くんは片手でコートを開くと、ふわっと私を抱き寄せた。
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