窓下の愛想

沈黙のまま

車は走り続けた

ただ絡め合う互いの

指の感触を

その温もりを

感じ確かめ合う

「もう着いちゃうね…」

最初に均衡を崩したのは

彼女の方だった

「嫌だな…」

その言葉にドキッとした

「でも、帰らなきゃ」

バレーをしに行くと言って

家を出て来た彼女だ

バレーはしていなくても

ママさん達が帰る時間には

帰らなければならない

例え旦那とはうまくいってなくても

子供もいる彼女は無理をさせる訳にはいかない

「あと10分もかからないか…」

そう僕が告げると

彼女は握った手に

ギュッと力を入れ

「本当はもっと一緒にいたいんだよ…」

その言葉に

僕の心は強く反応して

再び熱い高鳴りを覚えた

彼女の手を離し

両手でハンドルを握り

細い路地へと切った

少し進み電灯のない所で

車を止め

大きく深呼吸をした

キョトンとしている彼女の方へと向き直り

そっと両の肩に手を置く

少しビクッとしたが

抵抗する様子はない

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